「子どもに何か体験させたいけど、何から始めたらいいかわからない」。
そんなふうに思ったことはありませんか。
習い事や知育教材もいいけれど、もっと手軽に、もっと日常の中で、子どもの心が動く体験ができたら。
そんな方におすすめしたいのが「親子で花を育てる」ことです。
はじめまして。ガーデニングインストラクターの藤田みのりです。
園芸店で7年間働いた後、現在は月2回のペースで親子向けガーデニング教室を開いています。
小学3年生の息子と5歳の娘がいて、自宅の庭では年間50種以上の花を育てる日々を送っています。
この記事では、実際に教室で親子に人気が高く、初心者でも失敗しにくい花を5つ厳選してご紹介します。
種まきの時期や育て方のコツ、子どもがどんなふうに喜ぶのかまで、具体的にお伝えしていきますね。
子どもと花を育てる3つのメリット
「花を育てるなんて地味じゃない?」と感じる方もいるかもしれません。
でも実際にやってみると、子どもの反応は驚くほど生き生きしています。
「できた!」の達成感が自信につながる
種を蒔いて、水をやって、芽が出る。
たったそれだけのことですが、子どもにとっては「自分がやったから芽が出た」という大きな成功体験になります。
千葉大学環境健康フィールド科学センターの研究では、生花を見るだけで副交感神経が活性化し、リラックス効果が得られることが確認されています。
自分で育てた花なら、その効果はもっと大きいはずです。
教室に通ってくる子どもたちを見ていても、最初は「虫いやだ」「土さわりたくない」と言っていた子が、花が咲いた瞬間に満面の笑みを見せるんです。
あの顔を見ると、やっぱり花の力ってすごいなと思います。
五感をフル活用する体験になる
土のひんやりした感触、花びらの鮮やかな色、風に乗ってくる甘い香り。
花を育てるという行為は、子どもの五感をまんべんなく刺激してくれます。
日本花普及センター(JFPC)では、花がもたらす効用として「色・形による集中力向上」「香りによる免疫機能向上」「触れ合いによる創造力・コミュニケーション能力の向上」を挙げています。
スマホやタブレットの画面では得られない、リアルな感覚体験。
これが子どもの感性を耕してくれます。
親子の会話が自然に増える
「今日のお花、水あげた?」「あ、つぼみ膨らんでるよ!」。
花を育てていると、こんな小さな会話が毎日生まれます。
うちの息子が1年生のとき、アサガオの鉢を玄関に置いていました。
毎朝「今日は何色咲いた?」という会話から始まる日々が、今でもいい思い出です。
忙しい日々の中で、共通の話題があるのは親にとっても助かります。
「今日どうだった?」と聞いても「べつに」しか返ってこない時期が来る前に、一緒に何かを見守る経験を共有しておくのもいいかもしれません。
花選びで失敗しないための3つのポイント
「よし、やってみよう!」と意気込んだはいいものの、いきなり枯らしてしまうと子どもも親もがっかりします。
最初の成功体験を確実に得るために、花選びのポイントを押さえておきましょう。
発芽率が高く成長が早い花を選ぶ
子どもは「待つ」のが苦手です。
種を蒔いてから何週間も変化がないと、飽きてしまいます。
おすすめは、発芽率が高く、蒔いてから1週間前後で芽が出る花。
アサガオやマリーゴールドは発芽率が高い代表格で、「蒔いたのに出てこない」というストレスがほとんどありません。
子どもの手でも扱いやすいサイズ感
小さな種は、幼児にはつまみにくい。
逆に大きすぎる苗は、植え付けるときに折ってしまう心配があります。
アサガオやひまわりの種は1粒が大きく、子どもの指でもしっかりつかめます。
チューリップの球根も手のひらサイズで、「自分で植えた」という実感を持ちやすい。
年齢に合わせて、扱いやすい素材を選ぶのが長続きの秘訣です。
開花時期から逆算して種まきの計画を立てる
「夏休みに観察したい」なら5〜6月に種蒔き。
「入学式のころに咲いてほしい」なら秋に球根を植える。
こんなふうに、ゴールから逆算して始めると、子どもにとっても目標が明確になります。
「あと何日で咲くかな?」とカウントダウンする楽しみも生まれますよ。
親子で楽しむ”はじめての栽培”おすすめ5選
ここからは、私が教室で実際に使っていて、失敗率が低く、子どもの反応も抜群に良い花を5つご紹介します。
①アサガオ ─ 毎朝の「咲いたよ!」が嬉しい定番花
小学1年生の定番教材にもなっているアサガオ。
定番には定番になる理由があります。
種まき時期は5月下旬〜6月下旬。
発芽適温は20〜25℃で、気温が安定してから蒔けば1週間ほどで芽を出してくれます。
つるが伸びるスピードが早いので、毎日「昨日よりここまで伸びた!」と成長が目に見える。
7月に入ると次々と花が咲き始め、毎朝「今日は何色?」と確認するのが日課になります。
育て方のコツは3つ。
- 種まき前に一晩水に浸け、種の背中にヤスリで軽く傷をつける(芽切り)
- 本葉が8〜10枚になったらつるの先端を切る(摘心)で花数アップ
- 真夏は朝と夕方の2回水やり
咲き終わった花で色水遊びができるのも、子どもには大きな魅力です。
紫の花を水に入れてもみもみすると、きれいな青紫色の水ができます。
そこにレモン汁を垂らすとピンクに変わる。ちょっとした理科実験ですね。
②ミニひまわり ─ プランターで育てる小さな太陽
「ひまわりを育てたいけど、うちにはお庭がない」。
そんな方にぴったりなのがミニひまわりです。
品種「小夏」なら草丈25〜30cm。ベランダのプランターでも十分育てられます。
種まきは4月〜6月、発芽適温は25℃前後。
種が大きいので、3歳くらいの小さな子でも自分で土に押し込めます。
種まきから約2ヶ月で開花するので、「待てない」タイプのお子さんにもおすすめ。
小さいながらもしっかりひまわりの顔をしていて、咲いたときの感動は本家に負けません。
育て方のポイントはシンプルです。
- 日当たりの良い場所に置く(日光不足だと花が咲かないことも)
- 水は土が乾いたらたっぷり、でもやりすぎ注意
- 肥料は元肥を混ぜておけば追肥なしでもOK
うちの娘は「おひさまの赤ちゃんだ!」と言って毎日話しかけていました。
花が終わった後に種を収穫して、翌年また蒔く。
「命がつながる」ことを体感できるのも、ひまわりならではの学びです。
③マリーゴールド ─ 虫に強くて長く咲く頼れる存在
園芸初心者にとって一番怖いのは「虫」と「病気」。
その両方に強いのがマリーゴールドです。
発芽適温は20〜25℃。種まきは3月下旬〜5月中旬で、1週間ほどで芽が出ます。
そこから開花までも早く、5月〜11月という驚異的な長期間花を咲かせてくれます。
オレンジや黄色の鮮やかな花は、子どもの目にもわかりやすい「成功」の証。
半年近く咲き続けるので、「もう枯れちゃった」とがっかりする間もありません。
育て方のポイントはこちら。
- 水はけの良い土を使う(過湿に注意)
- 咲き終わった花はこまめに摘む(花がら摘み)と次の花が咲きやすい
- 日当たりの良い場所が◎
面白いのは、マリーゴールドには虫除け効果があること。
「コンパニオンプランツ」として野菜の横に植えると、害虫を遠ざけてくれます。
もし家庭菜園もやっているなら、トマトやナスの隣にマリーゴールドを添えてみてください。
「お花が野菜を守ってくれるんだよ」と教えると、子どもの目がキラキラします。
④チューリップ ─ 秋に植えて春を待つ「忍耐力」の花
他の4つが種から育てるのに対して、チューリップは球根です。
これがまた、別の面白さを持っています。
植え付け時期は10月〜11月。
玉ねぎくらいの大きさの球根を、尖った方を上にして土に埋める。
子どもの手のひらにちょうど収まるサイズ感が、「自分でやった感」を演出してくれます。
ただし、花が咲くのは翌年の3月〜5月。
植えてから約5ヶ月、土の中で静かに準備が進みます。
正直なところ、この「待つ時間」こそがチューリップ栽培の教育的価値だと思っています。
すぐに結果が出ないことに耐える力。変化が見えない時期を信じて水をやり続ける力。
春に花が開いたとき、その忍耐が報われる喜びは格別です。
富山県花卉球根農業協同組合のチューリップハンドブックによると、健全な球根を選んで適期に植えれば、初心者でもほぼ確実に花を咲かせられるとのこと。
育て方のコツは3つ。
- 球根2個分の深さに植える
- 水はけの良い土を使う(鉢植えなら市販の園芸用土でOK)
- 冬の間も土が乾いたら水やりを忘れずに
色のバリエーションが豊富なので、「赤がいい!」「ピンク!」と子ども自身に選ばせると、さらに愛着が湧きますよ。
⑤コスモス ─ 秋風に揺れる花を種から3ヶ月で
「秋にも花を楽しみたい」という方におすすめなのがコスモスです。
種まきから約3ヶ月で開花するので、7月に蒔けば10月には満開を迎えられます。
コスモスの最大の魅力は、その丈夫さ。
「荒地でも育つ」と言われるほどで、肥料はほとんど要りません。
むしろ肥料をやりすぎると葉ばかり茂って花が咲きにくくなるくらいです。
種まきの適期は4月〜7月と幅広く、多少タイミングがずれても問題なし。
5mmほど土をかぶせて押さえ、芽が出るまでは毎日水やりをするだけ。
育て方のポイントはこちら。
- 日当たりと風通しの良い場所を選ぶ
- 過湿に弱いので水のやりすぎ注意
- 支柱を立てると倒伏防止になる
秋風にゆらゆら揺れるコスモスの姿は、大人が見ても癒されます。
花が終わった後に種を採って封筒に入れ、来年のために保存する。
「この種から来年また咲くんだよ」と伝えると、子どもは不思議そうな顔をしながらも大事に持ち帰ります。
おすすめ5選比較表
| 花の名前 | 種まき・植付時期 | 開花までの期間 | 難易度 | 子どもが喜ぶポイント |
|---|---|---|---|---|
| アサガオ | 5月下旬〜6月下旬 | 約1.5〜2ヶ月 | ★☆☆ | 毎朝違う色の花が咲く |
| ミニひまわり | 4月〜6月 | 約2ヶ月 | ★☆☆ | 大きな種、ダイナミックな成長 |
| マリーゴールド | 3月下旬〜5月中旬 | 約2ヶ月 | ★☆☆ | 半年咲き続ける、虫除け効果 |
| チューリップ | 10月〜11月 | 約5ヶ月 | ★☆☆ | 色を選ぶ楽しさ、春の感動 |
| コスモス | 4月〜7月 | 約3ヶ月 | ★☆☆ | 丈夫、種の収穫で翌年へ |
どの花も難易度は低めです。
迷ったら、お子さんの年齢と「いつ咲いてほしいか」で選ぶのがおすすめ。
夏に楽しみたいなら①〜③、秋なら⑤、来年の春に向けて今から準備するなら④を選んでみてください。
親子栽培をもっと楽しくする4つのコツ
花を育てること自体も楽しいのですが、ちょっとした工夫でさらに豊かな体験になります。
教室で実践して効果が高かったものを4つ紹介します。
「自分の花」として名前をつけてみる
「太郎くんのアサガオ」ではなく、アサガオ自体に名前をつける。
うちの息子は自分のアサガオに「あおちゃん」と名付けて、毎朝「あおちゃん、おはよう」と声をかけていました。
名前をつけると、途端に「もの」から「存在」に変わります。
水やりを忘れて葉がしおれたとき、「あおちゃんが元気ない!」と慌てて水をやる姿は、思いやりの芽生えそのものでした。
観察日記で変化を記録する
毎日でなくてもいいので、週に1〜2回、絵や写真で記録を残すのがおすすめです。
「3日前と比べて葉が2枚増えた」「つぼみの色が変わってきた」。
記録があると、後から振り返ったときに成長の実感が倍増します。
小さな子どもなら絵日記でOK。
スマートフォンで定点撮影して並べてみるのも面白いです。
夏休みの自由研究にそのまま活用できるのも嬉しいポイント。
失敗を一緒に楽しむ姿勢を大切にする
正直な話、花は枯れることもあります。
水をやりすぎた、日当たりが足りなかった、虫にやられた。
原因はいろいろですが、それを「失敗」ではなく「発見」に変えてあげてください。
「なんで元気なくなっちゃったんだろうね?」と一緒に考える。
「水が多すぎたのかも。次はちょっと減らしてみようか」と次の行動につなげる。
orioriの記事でも紹介されている通り、植物栽培は子どもの「非認知能力」、つまり忍耐力や問題解決能力を育てる格好の機会です。
失敗から学ぶ過程にこそ、本当の教育的価値があります。
収穫した種や花で遊びに発展させる
栽培が「育てて終わり」になるのはもったいない。
花が咲いた後、さらに楽しめる遊びに発展させましょう。
- アサガオの花で色水遊び(レモン汁で色が変わる実験)
- ひまわりの種を数えてみる(算数の練習にも)
- マリーゴールドの花びらでしおり作り
- コスモスの種を封筒に入れて「来年の自分」へのプレゼントに
花は咲いた後にも楽しみが広がる。
そのことを子どもに見せてあげると、「育てること」への興味がさらに深まります。
まとめ
花を育てるのに、広い庭も特別な道具も必要ありません。
プランターひとつ、小さな種ひとつから始められます。
今回ご紹介した5つの花は、どれも初心者に優しく、子どもの興味を引き出してくれるものばかり。
大切なのは「上手に育てること」ではなく、「一緒に見守ること」です。
芽が出た日の喜び、花が咲いた朝の興奮、枯れてしまった日の切なさ。
そのすべてが、子どもの心を少しずつ豊かにしてくれます。
今度のお休みに、お子さんと一緒にホームセンターの園芸コーナーを覗いてみてください。
「どれにする?」と聞いたときの、あのキラキラした目。
きっと、それだけで始める価値があると感じるはずです。